5つの秘密5 secrets
第五章
業者をしっかりと見極めよう
信頼できない業者を見分ける秘密
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職人の入れ替わりが
激しい業者 -
現場で実際に家を建てるのは職人さんです。どれだけ設計図面がしっかりしていても、職人さんの技量や熱意が足りないと、プランどおりの家はできあがりません。
その意味で、職人さんの出入り(職人さんがやめてしまうこと)が激しい業者は、あまり信用しない方がいいでしょう。建築業者にも、さまざまなタイプの経営者がいます。なかには、まじめに仕事をした大工さんや職人さんに正当な賃金を支払わなかったり、支払いを引き伸ばしたりする工務店もあるのです。
一度そんな目にあうと、次からは仕事を断るのが人情というもの。当然、職人さんの出入りが激しくなります。腕のいい職人さんほど仕事の誘いは沢山ありますから、そういう人たちから遠ざかっていき、結局は技量や熱意に問題があったり、経験の浅い職人さんばかりが出入りすることになるのです。
これでは、注文どおりに家が建つ保証はないも同然です。施工ミス、手抜き工事、納期遅れなど、さまざまなトラブルが発生する可能性が、きわめて高いといわざるをえません。初めて取引する建築業者の職人さんの出入りまでは、なかなか分かりづらいものです。できることなら契約する前に、業者の事務所や他の物件の現場に数多く出向くようにしましょう。そこでの職人さんの挨拶の仕方、仲間うちの会話、現場の掃除の仕方などを観察すれば、信用できる業者かどうかは、自然と分かってくるものです。
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建てた家を
見学させない業者 -
これまでに建てた家を見学させてくれない業者は、敬遠した方が賢明です。
建てた家に自信があり、施主に対するアフターケアがしっかりしていれば、普通はすすんで見せてくれるもの。それを拒むのは、建てた家に自信がないか、施主との間になんらかのトラブルを抱えていると考えるのが自然だからです。
業者には普通、これまでの施工実績を写真で記録したアルバムがあります。まずはそれを見せてもらいましょう。写真を見ながら興味をもっか家についての説明を求めれば、信用できる業者なら、その家の設計・施工段階でどんな工夫をしたか、施主の意思をどう反映したかを、熱心に説明してくれるはずです。その中から見たい家を選んで見学させてもらえばいいのです。
見学の際には、そこでお住まいの家族とも対面させてもらいましょう。住み心地を聞き、設計段階で工夫した点などをうかがえば、自分か家を建てる際の参考になります。
新しい家だけでなく、できれば築十年ぐらいの家も見せてもらった方が安心です。住宅の長所や欠点は、ある程度年月がたたないと分からないことが多いからです。
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特別オーダーを
嫌がる業者 -
家を建てようとする人の大半は、建築について素人です。住宅雑誌などを見て研究したとしても、建築工学的な知識はもちあわせていません。知識はないけれど、住まいへの夢は最大限に実現させたいものなのです。
そんな素人の夢を、プロとして実現してくれるのが建築業者の仕事です。家を建てる人は、実現可能か不可能かは気にせず、夢を洗いざらい建築業者にぶつける。業者はそれに真剣に耳を傾け、プロとして適切なアドバイスを行いながら、可能な限り実現する。これが顧客と建築業者との健全な関係です。
外観や間取り、内装など、パーツごとにいくつかのモデルパターンを示して、それらを組み合わせて設計する。これだけでは顧客の意思を反映した仕事とはいえません。
お客さまがイメージしやすいように、モデルパターンを用意しておくこと自体は、悪いことではありません。けれどそのパターンにこだわって、お客さまの特別オーダーを嫌がる業者は、やはり遠慮した方がよさそうです。
お客さまの特別オーダーを嫌がり、パターンに固執するのは、その業者がお客さまの要望よりも自分の都合を優先している証拠です。
規格化された資材を使ってパターン化された施工を行えば、設計の労力も少なくてすみますし、コストも抑えられます。けれど、これはすべて業者のメリットにすぎません。特別注文を嫌がる姿勢があまりに執拗なら、業者の能力自体も疑う必要があります。パターン化された住宅ばかりを手がけて、特別注文の家を建てた経験が少なく、設計や施工管理能力に自信がないのかも知れないからです。
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急いで契約を
させたがる業者 -
不況が長引くにつれて、住宅着工棟数が激減しています。大手といえど赤字決算を計上する建築業者が増えているのが現状で、どこも売上を確保するために懸命な営業活動をくり広げています。
資金繰りをよくするために、少しでも早く契約がほしいという泣き落としに負けて、契約を急ぐ業者に押し切られてしまうのは感心しません。
最初の打ち合わせから一週間もしないうに間取り図と見積書を持参して契約を迫る業者もいるそうです。その間に顧客の要望が十分にヒアリングできるわけがありません。どんな家をつくるかを後まわしにして、とりあえず契約を交わしてしまおうという姿勢は、建築業者として本末転倒で、こんな業者も避けるべきです。
住まいは、多くの人たちにとって、人生で最も高価な買い物です。しかも家族全員が日々の生活を営む大切な棲み家です。心のよりどころです。
建築業者を選ぶ際には、まずしっかりした人間関係を築き、疑問や要望にしっかりこたえてくれる相手であることを見極める必要があります。さらに施工実績を調べて、住まいへの夢を実現してくれる能力があることを確認する必要があります。契約はこれらを確認して、はじめて交わすべきなのです。
訓練された営業マンは、初対面の際に好印象を与え、巧みな話術で契約をとるテクニックをもっています。けれども営業マンの能力と、業者が家を建てる能力とは、全くの別もの。本当に大切なものをしっかりと見極めて、後で後悔する愚はぜひ避けたいものです。
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おわりに
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健康やエコロジーヘの関心が高まるなか、安易に健康やエコロジーを「商品化」してしまう業者が増えてきました。
大手住宅メーカーの多くは、大金をコマーシャルに投じてそれらを宣伝しています。
本当の健康住宅、エコロジー住宅というのは、2世代、3世代が愛着をもって住み続けられる住まいだと思います。
それはご家族の生活習慣や、その土地の風土に見事に調和した住宅です。
すみずみにまで心くばりがなされた住宅です。
年間に何百戸もの家を建てるような大手住宅メーカに、そこまでの配慮を期待するのはムリというもの。
お客さまの要望に耳を傾けているように見えても、彼らが建てる住宅の基本はいくつかのオプションがついた企画住宅であって、企業自体がお客さまのニーズをきめ細かく吸収して反映する体制にはなっていないからです。
住まいへの夢やあこがれを、本音で語れるような建築業者に出会うこと。それを可能な限り実現してくれる熱意をもった建築業者に出会うこと。家づくりでは、それがなによりも重要です。
あなたがそんな業者と出会えることを、私は心から願っています。