5つの秘密5 secrets
第四章
落ち着きと安らぎを大切にしよう
照明・配色・インテリアの秘密
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インテリアの基本は
配色が第一 -
夜の街には、刺激的な原色のネオンサインがあふれています。その場所が非日常的な空間であることを表すための演出です。それを知らずに非日常的な配色を住まいに持ち込めば、神経が逆なでされて、落ち着いて生活することは不可能でしょう。
色の選択やそのコーディネートは、そこで暮らす人の心に大きな作用をもたらします。インテリアの基本の第一が配色であるというのは、そういう意味なのです。
ですから、壁紙やカーペット、カーテン、家具などを選ぶ際には、まず配色に気を配っていただきたいと思います。
赤や黄色などの暖色系が暖かい印象を与え、青や緑などの寒色系が涼しい印象をもたらすことは、広く知られています。
これは色相という尺度で色を分類したケースですが、このほか、色には明度という尺度もあります。つまり色の明るさのことで、明るいほど軽いイメージがあり、暗くなるほど重厚なイメージが強くなります。
このほかの尺度に彩度があります。これは色の鮮やかさを表しますが、鮮やかな色だと華やかな印象になり、くすんだ色だと地味な印象になります。
これらを組み合わせるのが配色で、同系統の色を組み合わせると、まとまって落ち着いた部屋になります。逆に正反対の色を組み合わせると、メリハリがあって印象的な部屋になるのです。
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基本色を決めてしまう
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配色を考える際は、まずわが家の基本色を決めましょう。
最初に色を決めるのは床です。フローリングにも、木肌の色をそのまま活かしたナチュラルなものから、ブラウン、ダークブラウンまざ、さまざまな種類があります。カーペットになると、もっと多彩な色がそろっています。家全体の印象は床の色で決まりますから、気に入ったものを慎重に選ぶべきです。
フローリングを選択したら、他の木部、たとえばドアや柱、幅木、回り縁、階段、木製家具などの色も統一することが大切。本部の色がそろっていないと、乱雑で落ち着かない雰囲気になってしまうからです。
カーペットを選んだ場合には、居間など家族みんなが利用するスペースのカーペットは、わが家の基本色で統一した方が賢明です。そのうえで子供部屋などプライベートな部屋のカーペットを別の色にすれば、各部屋ごとに基本色が変わって、ちがった雰囲気が演出できます。
フローリングとカーペット、どちらを選ぶにしても大切なのは、ひとつの部屋にあまり多くの色を乱雑に用いないこと。わが家の基本色を決めて、その色がもつイメージで部屋全体を演出しようとしても、家具や雑貨などの色が雑然としていては、演出効果も半減してしまいます。
たとえばダークブラウンの床とベージュの壁でしっとりした雰囲気をつくった部屋に、照明器具や置き時計などで、ワンポイントとして青や黄色など好みの原色を配置する。そこに鮮やかな効果が生まれるのです。
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神経を
逆なざするものを
排除する -
意外なことですが、家庭用のシステムキッチンの天板にステンレスを使っているのは、先進国では日本だけだそうです。欧米では、人工大理石や陶器タイルを使うのが一般的。これはステンレスの冷たい印象を嫌うのが理由です。
だから日本でも人工大理石や陶器タイルを使おうと言いたいわけではありません。生魚料理の多い日本では、シンクと一体になったステンレス製のシステムキッチンが最も衛生的であることも事実だからです。けれど金属の冷ややかさが人間の神経を逆なですることは、しっかりと認識しておく必要があります。
日本ではいまだに、家具や家電製品に金属がむき出しで使われることが少なくありません。けれどそれらの製品は、機能性を優先するオフィスにはふさわしくても、やすらぎが必要な家庭には不向きなものなのです。
コンクリート打ち放しの壁にも、同じことが言えます。その冷たく湿った感触は、倉庫や牢屋に押し込められたような不快感をもたらします。
真っ赤なカーペット、ショッキングピンクの壁紙なども、そこで毎日暮らすとなれば、神経に相当こたえることは明らかです。それだけでなく子どもたちの情緒に悪い影響をもたらす恐れさえあるのです。
百貨店の家具売り場などは非日常的な空間であるために、刺激的なものの方が魅力的に見えてしまう場合があります。けれど住まいは家族がやすらぎ、癒される場所。そのことをしっかりとわきまえて、神経を逆なでするものは選ばないよう心がけてください。
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心安らぐ照明の
コントラスト -
電気がなかった時代の日本家屋は、間接光をうまく利用して「光と影」を演出することに巧みでした。ところが戦後、蛍光灯が普及したことで、日本は間接光を活用するのが最も下手な国になってしまった気がします。
日本より太陽光が弱く日射時間の短い欧米のオフィスでさえ、よほど日が暮れるまで照明をつけず、つけても間接照明を多用するのが一般的。すみずみまで明るい日本のオフィスに慣れた目には薄暗くて驚くほどですが、それになじんでしまうと、むしろ日本の方が異様であることに気づかされます。
住まいの照明となると、日本と欧米の差はいっそう顕著です。欧米では、家庭用の照明に蛍光灯を使いません。アメリカでは天井照明もほとんど用いません。そのかわり、暖かみのある白熱灯を用い、大きなフロアスタンドやテーブルスタンドを必要に応じて配置しているのです。
このような照明方法だと、部屋全体は薄暗くなります。また部屋のすみずみまでが均等な明るさになることもありません。そのかわり、部屋の中に光と影が生まれるのです。
部屋のすみずみまでを明るくしすぎると、目や神経に悪いという説があります。目に入るさまざまな色や形を無意識のうちに認識し続けてしまうため、目や神経の休まる間がないからです。
夜にはカーテンを閉め切って、部屋をめいっぱい明るくする。そんな習慣を一度破って、カーテンを開け放って星の光をいれながら、スタンドの明かりで夕食を楽しんでみる。そうすれば、それがどんなに心安らぐ体験か、実感していただけると思います。